「かっこいい!」から始まったITへの道 ── VRで人を幸せにする25歳テクニカルリーダー・大城歩夢さんインタビュー【前編】
高校の情報の授業は寝ていた。医学部に行くんだと漠然と思っていた。
そんな高校生が、交換留学プログラムで訪れたシリコンバレーで「かっこいい!」と心を動かされ、卒業後にワシントン大学へ進学。コンピュータサイエンスを学び、沖縄に戻った今は25歳にしてVRで社会課題を解決するテクニカルリーダーになった──。リアルコネクト株式会社の大城歩夢さんに、高校時代から現在のお仕事まで、たっぷりお話を聞きました!

大城 歩夢(おおしろ あゆむ)
リアルコネクト株式会社 テクニカルリーダー。沖縄県那覇市出身。那覇高校卒業後、渡米。Shoreline Community Collegeを経てUniversity of Washington(ワシントン大学)に編入し、コンピュータサイエンスの学位を取得。2023年にリアルコネクト株式会社に入社。産業用メタバースやVRを活用した新規事業の開発をリードしている。
| 年月 | できごと |
|---|---|
| 2019年3月 | 沖縄県立那覇高等学校 卒業 |
| 2019年6月 | Shoreline Community College 入学(米国) |
| 2021年6月 | University of Washington 編入 |
| 2023年3月 | 同校卒業・Computer Science 学位取得 |
| 2023年7月 | リアルコネクト株式会社 入社 |
好奇心のままに動いた高校時代
━━━高校生の頃はどんな感じでしたか? 昔からITに興味が?
全くないです。情報の授業は寝てました(笑)。「おもしろそうだな」と思ったことを何でもやってみる子どもでしたね。宇宙とか生物とか人間の本が好きで、母親が大の読書好きだったので、その影響もあると思います。
━━━部活はやってたんですか?
中学まではサッカーをやってたんですけど、高校でOBと衝突して1年でやめちゃいました(笑)。今思うと、勉強ができたから変に自信があったんです。ちょっと傲慢だったというか。でも社会に出て、いろんな人に助けられてるなと気づいて──今はだいぶ謙虚になりました(笑)。
━━━部活の代わりに没頭していたことは?
予備校で出会った社長さんがスポンサーになってくれて、地元FM局で高校生の意見交換番組を1年間やってました。政治や財政から身近な話題まで、仲間と週1で放送して。卒業写真も、部活がなかったからこそ「面白い写真を撮ろう」って友達と悪ふざけしたり(笑)。面白そうだなと思ったことをとにかくやってみる、そんな高校生でしたね。

医学部志望からITへ ── シリコンバレーでの衝撃
━━━もともと医学部志望だったんですよね?
高校1年のとき、漠然と「医学部に行くんだ」と思ってました。母親が看護師で、予備校でも「国公立目指したら?」と言われてましたし。おばあちゃんに「医学部行く」って言うと喜んでくれて、お小遣いもらえるし(笑)。
━━━そこからITに変わったきっかけは?
高校2年の交換留学プログラムです。那覇高校には50年続く姉妹校との留学プログラムがあって、シアトル近郊のネイサンヘイル高校に行きました。向こうの生徒さんも日本に来てホームステイして、僕らも向こうで一緒に授業を受ける。その中で1週間、シリコンバレーを視察するプログラムがあったんです。Google、Intel、Appleの本社を訪問しました。


衝撃を受けたのはインテルのミュージアムでした。ITの成り立ちが展示されていて──元は戦争の暗号技術から生まれたものが、今やアニメや食べ物、文化を通じてお互いが同じ人間なんだと理解する一助になっている。一番平和に貢献した発明がITなんじゃないかと。
━━━高校2年生でそこに感動したんですね。
正直に言うと、最初の感想は「かっこいい! スタイリッシュ!」です(笑)。後から振り返ると後付けかもしれません。でも、「かっこいい」と思ったから自分で歴史を調べて、本当にいいと思ったから進みました。
きっかけなんて、そんなものでいいと思うんですよ。
母のネガティブキャンペーンを乗り越えて
━━━アメリカの大学に行くと決めたとき、周りの反応は?
母親のネガティブキャンペーンがすごかった(笑)。「アメリカは治安が悪い」「学費はこれくらいかかる」「途中でやめたらこうなる」って、定期的にLINEでURLが送られてくるんですよ。
━━━お母さんも心配ですよね(笑)。
でも、一度決めたことに対しては猪突猛進で。「できないかも」という不安じゃなくて「できるまでやる」という気持ちでした。もちろん不安があるからこそ慎重になれるし、プランBやCを考えるきっかけにもなる。でも、不安に負けると一歩も踏み出せなくなる。
━━━学費の問題はどうしたんですか?
高校を卒業してから、予備校でアルバイトしてお金を貯めて。学費を抑えるために、まずコミュニティカレッジで単位を取ってから、ワシントン大学に編入する戦略を自分で考えました。シアトルで友達もできてたし、「ここでやりたい」という気持ちは強かったですね。
━━━大学卒業後、なぜ沖縄に? アメリカで就職する選択肢もあったと思いますが。
大企業で働きたいっていう思いがあまりなかったんです。自分のやりたいことができる環境で、電車に乗らなくてよくて、年中温かくて、ご飯が美味しくて、友達がいる──それって沖縄だなと(笑)。コロナ禍で一時帰国したのがきっかけで、今の会社との縁ができました。
今のお仕事を教えてください!

━━━今はどんなお仕事をされていますか?
リアルコネクト株式会社でテクニカルリーダーをしています。ひと言で言うと、VRやメタバースを使って、お客様の課題を解決するシステムを作る仕事ですね。
具体的には、新しい開発の設計を考えたり、どの技術を使って作るかを選んだり、プロジェクトを管理したり、エンジニアが書いたコードをチェックしたり。あとは、お客様のところに営業の方と一緒に行って「こういうふうに作れますよ」って提案したりもします。メンバーの評価や、専門学校での会社説明会・面接もやっています。
━━━めちゃくちゃ幅広いですね!
そうなんです(笑)。労務と総務以外は全部やってます。ベンチャー企業ならではですね。大きい企業だったら10年、15年かけてようやく持てるような裁量権を、自分の実力次第で若くから持てる。それがベンチャーの魅力だと思います。
VR・メタバースで届ける仕事のリアル

━━━具体的に、今手がけているプロジェクトを教えてください!
一番力を入れているのが、VRを使ったリハビリテーションです。老人ホームや通所リハビリの施設で、高齢者の方が座ったままできるリハビリシステムを開発しています。
━━━リハビリにVR! どういう仕組みなんですか?
従来の作業療法にもパズルを使ったリハビリはあるんですが、ずっと下を向いて作業するので姿勢が崩れやすいんです。VRなら姿勢を正したまま、三次元に散らばるピースに手を伸ばすことで自然と重心移動が生まれる。しかも料理や釣りなど、好きな趣味に合わせたリハビリコンテンツもつくれるんです。
実際に患者さんに使ってもらったら、皆さん新しいものに興味津々で「楽しい!」って言ってくださって。それがすごくうれしかった。自分が描いていた絵図がきちんと形になって、喜んでもらえる──それが原動力ですね。

VRリハビリが従来の作業療法より効果があるという論文も多く報告されています。私たちは県内の医療・介護機関であるおもと会さんと連携し、VRリハビリの実証事業に取り組みました。補助事業として採択され、県への報告会も無事に終えることができました。今後は脳波などの生体情報を使って、なぜVRリハビリが効くのかを科学的に検証する研究にも取り組んでいく予定です。
━━━開発だけじゃなく、研究もしてるんですね。
あと、競合の製品は初期導入費用が400万円、年間利用料が120万円もするんです。でも私たちはMeta Questという市販のVR機器を使うことで、5〜8万円で提供できる仕組みを目指しています。お孫さんが「おばあちゃんの体が良くなるなら」って気軽にプレゼントできるくらいの価格にしたいんです。
━━━他にはどんなプロジェクトが?
VRのドローンシミュレーターも開発しています。今、ドローンを飛ばすには国家資格が必要なんですが、その実地試験のコースをVR空間にリアルに再現しました。航空自衛隊や陸上自衛隊への納品を目指していて、災害時の人命救助や物資運搬に使ってもらいたいですね。

━━━デジタルツインとかメタバースって、高校生にはちょっと難しく聞こえるんですが……。
ゲームの世界を作って、その中で現実ではテストできないことを試す仕事、というのが近いですね。たとえば自動運転の開発で、「子どもが飛び出してくる」みたいな危険なシナリオを、実際にやるわけにはいかないじゃないですか。それをバーチャル空間で安全にテストできるんです。
実際、私たちが使っているのはUnityやUnreal Engineというゲームエンジン。ほぼゲーム開発と同じことをしています。ゲーム好きな人は「やりたい!」ってなりそうですよね。

▶ 後編では、ITエンジニアの魅力やプライベートの過ごし方をお聞きします。
進路に悩む高校生へのメッセージも必見です!
※ この記事は2026年3月の取材時点の情報に基づいています。